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研究ノート

後期の作品として、新疆カシュガルに取材した作品群を提出しましたが、取材して感じたこと、考えたことを研究ノートとしてまとめました。

2023年11月

 

希望と失望の間
  –––新疆ウイグル自治区カシュガルで出会った老人の心の奥底–––

 

​1.はじめに 

新疆ウイグル自治区カシュガルは中国の北西部に位置し、長い歴史と多様な文化の交流がある都市である。古代シルクロードの重要な拠点でもあり、多様な民族や文化の交流の場でもある。近代の歴史において、カシュガルは多くの重大な社会的・政治的変革を経験してきた。これらの変革は地域の経済や政治の方向性に影響を及ぼすだけでなく、地元住民の生活様式や心理にも深い影響を与えている。このような背景の中、カシュガルの街の小売業者、特に老人たちは、これらの歴史的変遷の証人となっている。彼らの生活の風景は、彼らの感情は、個人と社会、歴史に対応していると無言で語りかけてくる。彼らの目には、後去への回想、現実への適応、そして未来への希望と夢が映し出されている。

2.希望と失望の間の心理的な落差を明らかにする

10月、『距離』の表現というテーマを持って、新疆カシュガルを取材した。そこの街で働く老人たちが経験すると夢の間の心理的な距離、あるいは落差を探る撮影と位置付けた。私は、レンズを通してこれらの老人たちが生活に対して持つさまざまな感情的な反応を見つめ、特に彼らが歴史と現実の中で、未来への期待と現実の苦闘をどのように感じ、表現しているかを探した。そして、風景に刻まれた物語を感じ、老人たちが希望と復興の間で感じる感情的な距離を捉え、個人の経験と社会的変革の影響の下で、彼らがどのように内面の矛盾や葛藤を処理しているかを想像し、写真として表現した。これらの写真によって、個人の感情の復雑さを明らかにするだけでなく、社会的・歴史的背景の下での人間性の輝きと挑戦を表現する。このような深いな探求を通じて、年老いた小売業者たちに対する大衆の親近感を高め、社会や歴史の中での彼らの経験に対する理解と共感を促したい。この取材を通じて、観客とこれらの老人たちの内面の世界とをつなぐ感情の橋を構築し、より多くの人々に彼らの生活の真実と復雑さを伝えたい。つまりこの写真プロジェクトは、カシュガルの老人たちの生活を深く観察するだけでなく、彼らの内面の世界を深く探ることを目的とし、写真を通じて彼らが希望と失望の間の情感的な落差と心理的な距離を示すことだ。

3.制作を終えて

 

シルクロードの重要な拠点として、カシュガルは豊かで多様な文化と歴史を持っている。取材中、新疆カシュガルのさまざまな人たちと出会い、歴史と現実が交わる中で彼らが経験している心理状態や感情体験に触れることができた。小売業者たちは中国全土と同様にロックダウンしてしまった街の暮らしの悲惨さを語ってくれた。食堂で出会った老齢の旅行者はコロナ禍の頃を思い出し『私は田舎で羊を飼っているのでコロナで羊が出荷できず収入がなくなった。野菜や他の食材が買えなかったので肉ばっかりたべていた。』と笑った。

深い皺が刻まれたトルコ系の顔立ちの人々は歴史の証人であり、社会の変遷と個人的な経験の交錯を物語り、厄災からの復興の中にあってますます複雑な感情の波を内に秘めているようだった。事前調査、撮影、現地の博物館の見学を通じて、歴史と文化背景を知り、この研究はこれらの高齢者が歴史と現実の中で心のバランスをどうみつけているかを感じ取れたと思う。彼らの目は過去の思い出を映していると同時に、現実への適応と未来への期待と夢を見つめている。彼らが希望と復興の間で感じる感情の距離は、個人の経験の復雑さを示すと同時に、社会歴史的背景下での人間性の光と挑戦を映し出している。

この研究を通じて、カシュガルの老年小売業者の生活を深く観察するだけでなく、彼らの内心の世界を深く探って、写真を通じて彼らが過去と現在と希望の間に感じている心情的な落差と距離を捉え、

個人の心の復雑さと人間の尊厳を表現することができた。私の写真が、見る人とカシュガルの老人たちの内心の世界との間に感情的な橋を築き、共感と親近感を高める助けになることを願っている。

 

2023年11月

2024年1月修正

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